東海林・菅井の『通史足尾鉱毒事件』・41 | 足尾鉱毒事件自由討論会

東海林・菅井の『通史足尾鉱毒事件』・41

著者菅井はまた、渡良瀬川の沿岸農民たちが谷中村の遊水池化に賛同した理由は、政府に騙されたからであり、しかもこの時日本政府が日露戦争を推進しようとしていたためだったのだという、全く勝手で政治的に偏向した主観的見解を述べています。
引用しましょう。


「谷中村廃村にいたる過程はまさに日露戦争の真っ最中であり、国家権力を握る者たちは、社会のあらゆる局面で日露戦争に向けて国家的な統合をはかっていた時期だったのである」


「農民活動家たちの全体的な変節も、こうした時代的背景を考慮してはじめて解明しうるのである」


「このように考えると、農民の鉱毒反対運動を挫折させ、谷中村を滅亡させたのは日露戦争であった、さらに言えば日露戦争を起こした者たちであった、ということができよう」


「田中正造は後に、政府は<日露戦争中に谷中村を占領>したのだと述べている」


あまりにも馬鹿馬鹿しい理屈ではないでしょうか。

農民は、田畑が元に戻って普通の経済生活が出来れば、政府への反対運動などする必要はありません。
谷中村の遊水池化は洪水の予防対策ですから、政府の計画に賛同するのは当然です。
いったいなんで日露戦争が関係してくるのでしょう。


東海林も同じことを言っていますが、菅井もまた左翼思想に懲りかたまって、田中正造の反戦思想に感激したにすぎないと、私は解釈します。