東海林・菅井の『通史足尾鉱毒事件』・3 | 足尾鉱毒事件自由討論会

東海林・菅井の『通史足尾鉱毒事件』・3

「まえがき」からの引用をつづけます。


「明治政府は、日露戦争の開戦準備の一環として、鉱毒問題を治水問題にすりかえ、農民たちの鉱毒反対闘争に対して徹底した弾圧政策をとり、今日の公害問題にも共通する体制と公害企業の癒着構造を、劇的に刻んでいる」


「生涯をかけてこれと取り組んだ田中正造の行動と思想は、人権と環境の問題、さらに反戦・平和の課題を担うものとして、鋭く現代を照射している。
田中正造の思想は、いまあらためて現代に甦らせることが求められているのである」


皆さんは、ここに書かれた文章の意味が理解できますか?
「日露戦争の開戦準備の一環として、鉱毒問題を治水問題にすりかえ」は、絶対に分からないだろうと思います。


著者が勝手にそう書いているだけで、事実とは無関係だからです。


政府が「徹底した弾圧政策をとり」も、全くの嘘です。
明治政府は「農民たちの鉱毒反対闘争に対して徹底した」防止対策をとったので、被害にあった農地は回復しています。これが事実です。


ですから、「今日の公害問題にも共通する体制と公害企業の癒着構造を、劇的に刻んでいる」は、とんでもない創作としかいい得ません。


政府の公害対策が成功したにもかかわらず、これを否定して政府を批判し続けた「田中正造の行動と思想は」、したがって、見当違いのドンキホーテ的なもので、これを「反戦・平和の課題を担うもの」などと認識することは、馬鹿馬鹿しい妄言にすぎません。


「反戦・平和」を唱えればいいと思い込んでいる著者には、左翼の文化人気取りの愚かさが感じられてあきれるばかり。時代錯誤の学者の象徴みたいな趣きがあります。