東海林・菅井の『通史足尾鉱毒事件』・1 | 足尾鉱毒事件自由討論会

東海林・菅井の『通史足尾鉱毒事件』・1

昭和59年に新曜社から刊行された、東海林吉郎と菅井益郎のこの共著は、たぶん岩波新書の『田中正造』に次いで読まれている類書だと思います。


東海林吉郎はこの分野では相当よく出来る研究者ですし、菅井益郎は平凡社の『世界大百科事典』の「足尾鉱毒事件』を執筆している、いわばこの分野の権威のような学者だからです。


しかし、私は、この本のサブタイトルの「1877-1984」にひどい誤魔化しがあることを、まず問題にしたいと思います。
その理由は、一つの事件は百年以上続くわけがないのいに、無理やり長期間に引き伸ばしてこの事件を問題にしようと意図しているからです。
1877年は古河市兵衛が足尾銅山を買った年、1984年はこの本の出版年。事件とは何の関係もない数字です。


公害問題が発生したのは1885年頃、公害対策が成功して被害農地が復旧し、事件が解決したのは1903年頃ですから、あまりにも無茶な引き伸ばしをしています。


そもそも「事件」という言葉に百年以上の時間は含まれません。「足尾鉱毒問題の百年」とでもいうのであれば問題はありませんが、「歴史」と事件とは概念が全く違いますから、これを一緒くたにするのは無茶苦茶です。


「百年公害」という言葉がありますが、おそらくこの人たちが広めようと意図したのでしょう。いったいそうまでして、何で古河鉱業を非難しなければならないのでしょう。私には意味が分かりません。


ともあれ、この本もまた、田中正造の言動を善とし、政府や古河側を悪とする馬鹿げた哲学によって書かれているので、具体的にその間違いを指摘していきます。