日経から訴えられる⑦ | 足尾鉱毒事件自由討論会

日経から訴えられる⑦

裁判の結果は、1,2審とも予想どうり、日経新聞社の請求を棄却するものでした。
その内の、2審、東京高裁の判決から、理由の一部を紹介します。


「本件記述部分が、古河市兵衛の再評価を行うとともに、これに関連して、足尾銅山以外の鉱山の公害の実態を再検討しようという学術的な意図に基づくものであることは、明らかであり、控訴人新聞記事について、上記の問題意識に基づいて行う意見ないし論評の表明は、公共の利害に関する事実にかかわり、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認められる。」


「そして、<彼(田中正造)が戦略的に作ったデタラメの話まで、何十万という新聞の読者に真実らしく報道するのは罪作りではないか>との本件記述部分の表現が、意見ないし論評としての域を逸脱したものかを見るに、被控訴人砂川の<実は、田中正造によって足尾鉱毒問題があまりにもクローズ・アップされたため、その陰に隠れてしまったものがある。一つはこのことで悪役と見なされた古河市兵衛の実像であり、ひとつは同業他社が撒き散らしていた鉱毒の実態である。>からすれば、控訴人新聞記事に疑問を感じ、これを批判的に採り上げざるを得ないことは、健全な言論活動の範囲内として当然のこととして理解されるものである。」


「控訴人は、この表現は控訴人がでっち上げの報道をしたというに等しく、新聞記者にとって致命的なものであって、言論機関の存立基盤を脅かす最大級の悪質な誹謗中傷である旨主張するが、わが国を代表する新聞媒体機能を担う控訴人の地位、性格等にかんがみると、独自の見解の憾みを免れず、採用することができない。」


「したがって、名誉毀損の不法行為を言う控訴人の主張は理由がない。」