日経から訴えられる⑤ | 足尾鉱毒事件自由討論会

日経から訴えられる⑤

この裁判で日経が提出した証拠に、小島ひでき記者の陳述書があります。とても興味深いので、その一部を引用します。


「2001年4月初め、文化部の書評担当者から私に、砂川幸雄著『運鈍根の男』が書評に値する本かどうか、検討してほしい、との依頼がありました。」
「名のある出版社の本でもあり、とりあえず読み始めましたが、古河市兵衛を無批判に絶賛する、いちじるしくバランス感覚を失調した本であると思いました。途中でいい加減、嫌気がさしたのですが、放棄する寸前に、173頁で、問題の記述にぶつかったのです。」


この陳述によって、この本がなぜ日経新聞に取り上げられなかったか。その理由が明瞭になりました。しかし、古河市兵衛の伝記は、関係者が自費出版したもの一冊しかなく、私が書いたものは資料として貴重なので、日経は書評で採用するだろうと思っていたのです。
それまで出した財界人の伝記5冊は、全国紙だけでも、読売、毎日、朝日、日経、聖教、公明の諸新聞に紹介されましたし、私が小島記者の言うような書き方をしているはずはありません。
日経新聞は、読者へのサービスよりも一人の記者の感情のほうを優先させたのです。日本の代表的な新聞として、これは明らかにバランス感覚を欠いています。古河市兵衛は古河財閥の始祖ですし、「明治十二傑 」にも選ばれた、財界一の人気者でもあったのですから。同紙がボイコットしたのは、私の本だけではありません。同紙は、それまでは、晶文社発行の本を1年に3から5冊書評で採り上げていたのですが、この裁判の最中は一切採り上げなかったのです。あまりにも冷静さを欠いているではありませんか。